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「父を撃った12の銃弾」ハンナ・ティンティ(文芸春秋)
父と娘が暮らす現在の時間と父が生きてきた過去の時間、アリゾナの砂漠からアラスカの大氷河12発の銃弾が語る物語
2「正義の弧」マイクル・コナリー(講談社文庫)
ロサンジェルス市警未解決事件班責任者レネイ・バラード、ボランティアとしてリクルートされたボッシュ。
市会議員の妹が殺害された事件と、砂漠に埋められた一家殺害事件。
3「禁忌」フェルディナント・フォン・シーラッハ(創元推理文庫19年)
色に対する共感感覚の持ち主で写真家として成功を収めたセバスティアン。
若い女性の誘拐殺人容疑で逮捕されるが、被害者の死体もなく名前すら判らない
「うらを見せおもてを見せて散るもみぢ」(良寛)
4「愚者の街」R・トーマス(新潮文庫)
第二次世界大戦下の香港で諜報活動の中、投獄され失職した元秘密諜報員のダイ。
「街を一つ腐らせてほしい」不正と暴力で腐敗した街の再生計画。大人の読み物。
5「わが母なるロージー」ピエール・ルメートル(文春文庫)
パリで爆破事件発生後、警察に出頭した青年ジャンは爆弾はあと6個仕掛けてあると告げ金を要求する。
意表を突く出だしアイデアが簡潔で巧い中編。
6「業火の市(まち)」ドン・ウインズロウ(ハーパーBooks)
1986年アメリカ東海岸ロードアイランドの裏社会。
アイルランド系マフィアとイタリア系マフィアが微妙な力関係で共存してる。
「こんな美しい女はたいてい厄介ごとを引き起こす」
7「噤みの家」リサ・ガードナー(小学館文庫)
ボストンの住宅で銃殺された夫と、拳銃を手に立っていた妊娠中の妻イーヴィー。
出だしのキャッチ、謎が謎を呼ぶストーリー展開の上手さ、そして背後に女性たちの深い心の傷。
8「影のない四十日間」オリヴィエ・トリュック(創元推理文庫)
ノルウエイ北極圏、四十日間の極夜が明けた町、トナカイ警察警官クレメットと新人女性警官ニーナ。
厳しい風土の中で歴史に翻弄され続けてきた先住民族の歴史
9「天使の傷」マイケル・ロボサム(ハヤカワ文庫)
臨床心理士サイラスと嘘を見抜く少女イーヴィの「天使と嘘」の続編。
闇の組織と陰謀は既視感あるが、テンポの良さと主人公(少女)のキャラで読ませる。
10「弁護士アイゼンベルク」アンドレアス・フェーア(創元推理文庫)
ホームレスの少女から、女性の殺害容疑で逮捕されたホームレス仲間の男の弁護依頼。
法廷物ではなく、二転三転するストーリーのエンターテインメント。
10「真珠湾の冬」ジェイムズ・ケストレル(ハヤカワ・ミステリー)
真珠湾攻撃まじかのハワイから、開戦直後の香港、東京、終戦後の1945年まで。
連続殺人事件の背景に犯罪、スパイ恋愛等様々な要素が詰め込まれた重量級の作品。
10「鹿狩りの季節」エリン・フラナガン(ハヤカワミステリー)
鹿狩りの季節を迎えたネブラフスカの田舎町で、女子高生が失踪、ただの家出か事件に巻き込まれたのか。
青年の保護者夫婦と姉思いの弟、浮かび上がる平穏な村の複雑な人間関係。
10「コリーニ事件」フェルディナント・フォン・シーラッファ(創元推理文庫)
67歳のイタリア人で殺人容疑者コリーニの国選弁護人となった新米弁護士ライネン。
緊迫した法廷劇のリアリティ、短い作品ながら秀作。(2017年)