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 「ネコも歩けば・・・(酔中日記)」

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芭蕉記念館

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いつかはと思いつつ予定表の隅に放り込んだままにしていた「芭蕉記念館」
最近『芭蕉というう修羅』嵐山光三郎(新潮社)を読んで以来むくむく。
新宿から地下鉄都営新宿線で森下、新宿から下町まで一直線だなんて!
方向土地勘には自信あるつもりだったが、東京の路線図は×十年前のままアップデイトが間に合わない。

森下駅を出れば深川の町。
富岡八幡宮と木場、辰巳芸者の岡場所位しか浮かばない江戸の外れに伊賀の山中から出てきた芭蕉が何故居を構えたか?
若き水道工事技師としての実像を知るまでは不思議に思っていたが、隅田川の畔に立てば江戸時代の河川工事を思い浮かべ納得。

初見参の芭蕉館(入館料200円)展示コーナーには俳聖松尾芭蕉の生涯と深川芭蕉庵での活動、奥の細道旅立ち衣装などが展示されている。
企画展として<蕉門十哲・芭蕉の弟子ベスト10>高弟として名高い宝井其角や向井去来、芭蕉のスポンサー杉山杉風(さんぷう)等十人の作品や人物像が紹介されているが、やはり気になるのは奥の細道の同行者で隠密旅の実務面を仕切っていたといわれる河合曽良。
後に幕府の巡見使とし九州を巡検中に死んだ曽良の残した「曾良旅日記」の重要性。
曽良の役人の眼の側から奥の細道の旅を映像化したら・・・と夢想してみる。

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庭園に出ると芭蕉の句に読まれた草木が植えられ、築山には芭蕉庵を模した祠と句碑がある。
「古池や蛙飛びこむ水の音」
あまりに有名なこの一句も、嵐山のクソリアリズムに肯くわけではないが<蛙は池の上から音をたてて飛びこまない。音をたてずに水中に入る。音を立てるのは絶体絶命の時だけ。芭蕉が聴いた音は幻聴か観念・・・>
<瞬間のできごとをとらえつつ、句が動いていく。「見えないもの」を見るのが芭蕉・・・>

俳諧という共同体の文芸の世界で、心に修羅を抱えながら屹立する孤峰であり続けた芭蕉。
50歳の旅の途中で力尽きた天才にとって、旅とは何だったのかと改めて問いたくなる。
「此の道や行人なしに秋の暮れ」

もう一度西行に戻るしかないのか?
「吉野山こずゑの花を見し日より心は身にもそはずなりにき」






by kcat46 | 2017-10-14 10:20 | 観読聴 | Comments(0)